秋の下ノ廊下・水平歩道を歩いてきました。
1日目は黒部ダムから下ノ廊下を通って阿曽原温泉小屋まで歩いてテント泊で1泊しました。
今回は阿曽原温泉小屋から欅平駅に下山する2日目の記事になります。
1日目の記事はこちら。
水平歩道を歩いて欅平駅へ
2日目の朝。
シングルウォールのクロスオーバードームは例によって水滴が壁面を伝い落ちる程度の結露がありましたが、持ってきた吸水クロスの活躍に助けられ床面が水浸しになることはありませんでした。
夜中に目が覚めた時や明け方に何度か拭き取ったことで、撤収する時にはフットプリント以外はほぼ乾いていました。
このクロスは吸水性抜群なので、ダブルウォールのテントを使っている方も、フライシートの水滴を拭き取りに活躍してくれると思います。
そんなわけで、出発に向けたテント内の片づけは順調でしたが腹が不調でした。
テント場が明るくなる前から腹の調子が悪く、トイレに4回くらい行きました。
やはり山小屋や水場の水を使うと高確率で腹が下るので、高くついても水はペットボトルのものを購入したほうが良さそうです。
落ち着いたところでストッパを飲んで阿曽原温泉小屋を出発しました。
スタート直後からまあまあの登り。
そして登ったと思ったら下り…。
阿曽原温泉小屋を出発してしばらくは「水平歩道」の水平とは縁のないアップダウンを歩くことになります。
2日目は晴れの予報でしたが高曇りでスッキリしない空模様です。
期待していただけに残念…。
オリオ谷
人が入っていないのでサイズ感が分かりませんが、なかなか立派な滝でした。
折尾ノ滝を振り返ります。
文字通り水平な歩道であることが分かると思います。
それにしても2日目も周囲の木々の紅葉が見事です。
旅の相棒スポルティバTX4。
靴紐が落ち葉の色と合いますね。
ビブラムのメガソールのおかげなのか、下ノ廊下からここまで足元が滑って…みたいなことは1度もありませんでした。
大太鼓
しばらく歩いていくと奥鐘山が見えてきます。
そして更に歩いていくと人気の撮影スポット「大太鼓展望台」に到着します。
この構図で記念撮影している人が多いと思いますが、僕は三脚を立てて写真を撮るのが面倒になりスルー。
ブログを書いたり動画を編集する段階になって「やっぱり撮っておけば良かったなぁ」と後悔しています…。
志合谷
志合谷の手掘りのトンネルは真っ暗で距離は150mほどあるのでヘッドライト・懐中電灯必須です。
そして天井から滴り落ちた水が地面に溜まっているので、ゴアテックスのミドルカット以上の靴でないと靴に水が浸水します…。
メッシュの多いトレランシューズは即ゲームオーバーです。
YouTube動画などを見た感じでは「ちょっとくらいの水たまりなら大丈夫だろう」と思ってローカットのアプローチシューズを履いてきましたが完全に水没しました。
歩いていればそのうち乾きますがあまり良い気分ではありません…。
志合谷宿舎跡
志合谷のトンネルを抜けて少し歩いた先にコンクリート造の建造物が見える場所があります。(意識して谷を観察しないと見つからないと思います)
この怪しい廃墟のような場所は高熱隧道でも登場する志合谷宿舎跡です。
仙人谷までのトンネル工事の作業員のための宿舎のひとつで、周辺の植生を分析して「雪崩はないだろう」と建築されたものでした。
ところが1938年12月27日に泡雪崩が発生し、木造部分の3~4階が就寝中の作業員もろとも吹き飛ばし、84名もの死者・行方不明者を出しました。
高熱隧道や欅平駅のボードには上のような説明がされていますが、その後の聞き取りなどで吹き飛ばされた部分は木造であること、建物は対岸尾根あたりに飛散したという調査結果が寄せられています。
どちらが本当か分かりませんが、雪崩を食らった建物の木造部分が丸ごと尾根を越えた先の奥鐘山まで飛んでいくというのはちょっと無理があるような気がしています。
消化試合?
今回の下ノ廊下・水平歩道の事前に調べてあった旅のハイライトは以上になります。
あとは周囲の紅葉を楽しみながら欅平駅への下降点を目指します。
ここから先は消化試合…なんて言ったら怒られそうな見事な紅葉の風景が続きます。
水平歩道は下ノ廊下(旧日電歩道)とは違って、登山者とのすれ違いは割と楽です。道が細くて大変なのは大太鼓展望台付近くらいだったと思います。
1日目のような緊張感がないこともあってか、志合谷を過ぎてからの歩行時間が長く感じます…。
送電線鉄塔
水平歩道を歩いている途中でチラチラと見えていましたが、送電線鉄塔あたりまで来るとご覧の通り。
奥鐘山の向こうに後立山連峰が見えました。
中央の奥鐘山の右奥が鹿島槍ヶ岳、左奥のギザギザしたところが不帰ノ嶮でしょうか。
水平歩道の最後にこんな豪華なお見送りがあるとは知りませんでした。
欅平への激下り
激下りというのは若干大げさに聞こえるかもしれませんが、両膝が逝ってしまっている僕はそう感じました。
最後の最後で大きくペースダウンしましたが、ここまで来ればもう一息です。痛みに耐えつつ1歩1歩下っていきます。
黒部峡谷鉄道の欅平駅に到着!
10時33分。
黒部峡谷鉄道の欅平駅に到着しました!
ピークを踏まない断崖絶壁ハイキングはこれにて終了です。
駅でトロッコ列車の切符を購入して、2階の食堂でカロリー補給を行いました。
自宅までの経路をちゃんと調べてから切符を買えばいいのに、疲れて思考停止していたのか次の列車の切符を購入してしまい、時間がなくて注文した天ぷらうどんを「わんこそば」のように流し込む羽目に…。
黒部川沿いの紅葉を楽しみながらトロッコ列車で帰路に就く
欅平駅からはトロッコ列車に乗って宇奈月駅に向かいます。
男は黙って窓無し自由席。
吹きっさらしの車両なので防寒具必須です。
ただ景色は窓越しに見るよりもこっちの方が絶対に良いと思います。
室井滋の車内放送?を聞きながら列車はゆっくり宇奈月に進んでいきます。
宇奈月駅に到着しました。
乗り換え時間を考えずに宇奈月まで来てしまい、宇奈月温泉駅から次の電車まで少し待つことに…。
そして黒部宇奈月温泉駅で新幹線に乗り換えて横浜に帰りました。
欅平駅に着いたところで乗り換えの時刻をちゃんと確認しておけば、もう少し各所を楽しむ時間があったような気がします。
最後はちょっとグダグダになりましたが、とても濃密な2日間をすごすことができました。
今回初めて黒部ダムから欅平まで歩いて色々な発見・学びがあったので、次に歩く時は準備を万全にしてより楽しみながら歩きたいと思います。
計画を立てる際の注意点
黒部ダムから欅平の区間は旧日電歩道・水平歩道という岩壁をくりぬいて作られた細く不安定な道を長時間歩きます。コースタイム的に1日では歩き切れないので、阿曽原温泉小屋に宿泊するのが前提になると思います。
下ノ廊下周辺の最新情報は阿曽原温泉小屋のホームページをはじめ、SNS・YAMAP・ヤマレコなどでも情報収集を行い、万全の計画を立てましょう。
どちらから歩くか問題
僕は黒部ダムをスタート地点にして、欅平駅まで歩きましたが、欅平を起点にして黒部ダムを目指す歩き方もあります。
黒部ダムから歩くメリットは集中力・体力のある1日目に危険地帯を通過できること、2日目の行程が割と短くなることなどが挙げられると思います。
ただ初日にクライマックス(下ノ廊下)が来てしまうので、2日目が少々物足りなく消化試合のように感じてしまうかもしれません。
欅平から歩くメリットは、割と安全な水平歩道を歩いて1日目を終えて、2日目にクライマックスの下ノ廊下を持ってこれることだと思います。
デメリットは欅平までのアクセスの悪さと、2日目の行動時間が長くなることでしょうか…。
装備品は秋の北アルプス想定で
宿泊地の阿曽原温泉小屋は標高860mなので厳冬期のような装備は不要ですが、気温が氷点下になることもあるので、秋の北アルプスを歩く際の装備くらいは必要になってくると思います。
今回僕が持って行った装備品は改めて記事する予定です。
バックパックへの外付けは要注意!
下ノ廊下・水平歩道は岩壁を縫うように歩くので、バックパックへの外付けは岩壁に引っかかったり、ぶつかってよろけたりして谷底に真っ逆さま…みたいな事故が起こりかねないので避けましょう。
例えばトレッキングポールをサイドポケットに入れる場合、または巻いたテントマットを取り付ける場合は、必ず谷側にくるように気を付けたほうがいいと思います。
…というわけで下ノ廊下の記事は以上になります。
YouTubeでも下ノ廊下の様子を公開しているので、そちらも併せてご覧ください。