前回の続きです。
この日は午後から天気が崩れ、台風20号が本州を通過する予報になっていました。朝から天気が悪ければ下山するつもりでしたが、見事な快晴だったので予定通り先へ進むことに決めました。
薬師峠キャンプ場から薬師沢小屋へ
テントを撤収して5時前に薬師峠キャンプ場を出発します。
この日の予定は雲ノ平を経由して宿泊予定地の三俣山荘まで移動します。
まずは20分ほど歩いて太郎平小屋に戻ります。
小屋の外トイレをお借りして用を足し、まずは薬師沢小屋まで移動します。
太郎平小屋を出てすぐのところに黒部五郎岳と薬師沢の分岐にさしかかります。
黒部五郎岳経由で三俣山荘に行くのも悪くないなと思いましたが、以前登った山なので今回は歩いたことのないコースから三俣山荘を目指すことにしました。
太陽に照らされてピンク色に染まる空。
夜に台風が上陸するなんてこの段階ではちょっと想像できません。
薬師沢小屋は名前の通り沢沿いにある小屋です。
雲ノ平に向かうにはまずは薬師沢小屋まで標高を下げ、そこから雲ノ平に向けて急登を登り返します。
まずは徐々に山を下ります。
後で登り返すことを知りながら標高を下げるのは何とも勿体ない気分です。
どんどん下っていくと沢が見えてきます。
途中何か所か渡渉点を超えて、整備された木道を歩き先へ進みます。この辺りはアップダウンもそれほどなく木道も手入れされていて歩きやすかったです。
太陽に照らされて輝く朝露に濡れたクマザサが綺麗でした。
そしてエメラルドグリーンに透き通った薬師沢が見えてきたら小屋はもうすぐ。
薬師沢小屋で休憩
薬師沢小屋に到着しました。
ここでコーラを買って休憩します。
日陰の沢沿いということで体を休めていたら体温が一気に下がりました。飲み終えたペットボトルを小屋のゴミ箱に入れて、トイレを済ませて出発します。
色々と怖い薬師沢小屋周辺
休憩後は吊り橋を渡って沢の対岸に向かいます。
歩くところが狭くて結構怖いです。
吊り橋を渡り終えると沢沿いに下りる平常時のルートと岩場を進む増水時のルートの分岐にさしかかります。この日はまだ天気が荒れる前で沢の水量に問題はないので沢まで下りる道を通りました。
対岸に下りて小屋を振り返って撮影した1枚。薬師沢小屋は沢にギリギリのところに建っていますが、増水時は大丈夫なんでしょうか?
ふたたび進行方向へ。
小さな滝の上にかけられた橋を渡ります。普段は水量の少ない小さな滝ですが、大雨が降った後は大変な水量になるようです。
Youtubeで衝撃的な映像を見つけたのでここに掲載しておきます。
僕はこれから雲ノ平方面へ向かいますが、動画の渡渉されている方は反対側から薬師沢小屋に向けて進んでいます。
水量が増えるとこんなことになってしまうんですね・・・。
日本最後の秘境「雲ノ平」へ
滝を通り過ぎたすぐの所に薬師沢出合のプレートがありました。
今回は温泉に入っている時間はないので高天原には立ち寄らず、雲ノ平方面へ進みます。ここから1時間30分くらい急な斜面をひたすら登ります。
登っても登っても森林限界を超えることができず、また先へ進んだ実感を得られず非常に疲れた区間でした。
ようやく木道ゾーンに出てひと安心です。
ここから先も多少のアップダウンはありますが、薬師沢出合からの急登に比べれば屁みたいなものです。
綿毛が白くなったチングルマが増えてきました。
高山の夏はもう終わろうとしています。
木道を進んでいくと正面に水晶岳が見えてきます。
そしてようやく雲ノ平山荘が見えてきました!
長かった・・・。
雲ノ平山荘で休憩
雲ノ平山荘に到着しました。
中に入って少し休憩することにしました。


入口から中に入るとこんな感じでした。
とても綺麗な山小屋です。
ここは談話室でしょうか。
お洒落です。
窓の外の眺めも素晴らしい。
食堂です。
すでに食事メニューが提供されていたので、何か食べて行こうかなと思いましたが、天気がいつ崩れるか分からないのでジュースを飲んで少し休憩したのちに出発することにしました。
建物がすごくお洒落で雰囲気が良かったので、いつか山小屋泊で再訪したいと思いました。
宿泊予定地の三俣山荘へ
外に放置していたバックパックをふたたび背負って出発します。
雲が増えてきました。
そして写真では伝わりませんが、雲がすごい速さで左に流れていました。まだまだ晴れ間はありますが、台風の接近に伴って天候は刻々と変化しているようです。
さらば雲ノ平山荘!また来ます。
少し歩くと雲ノ平キャンプ場分岐にさしかかります。
ここのテント場はトイレはありますが、受付と売店が雲ノ平山荘まで移動する必要があるため、テント泊は結構大変かもしれません。
今夜台風がやってくるという状況で幕営している登山者がいて驚きました。
ライチョウファミリーに遭遇!
雲ノ平キャンプ場分岐から少し進んだところで、足元にもぞもぞ動く物体に気が付き見てみるとライチョウがいました!
1枚の写真に収めることはできませんでしたが、数えたら親鳥を入れて7羽でした。こんなにたくさんのライチョウを同時に見るのは初めてです!
だいぶ成長してきていますが、まだ幼さが残っています。
人間を怖がらないマイペースぶりで周囲をウロウロしていました。
少し高いところに登って周囲を見張っているのは親鳥でしょうか?
しばらく木道付近をウロウロしたあとはハイマツの奥に消えていきました。
ピークハントは諦めて三俣山荘へ直行
時刻はまだ午前11時前。
祖父岳や鷲羽岳を経由しても三俣山荘に到着する時間はそれほど遅くはならなそうですが、天気の良いうちに小屋に到着しておきたいと考えて、黒部源流の渡渉点まで下って三俣山荘へ登り返すコースタイムの短いルートを選びました。
それにしても雲ノ平は贅沢な場所ですね。
水晶岳に赤牛岳。
前の日に登った薬師岳も見えます。
そして黒部五郎岳と五郎のカールも。
名だたる山々に囲まれた素晴らしいトレイルです。
しばらく歩くとチングルマの群生地の向こうに槍ヶ岳が見えてきました。
穂高連峰も綺麗に入る構図でしたが穂高の山々は雲の中・・・。
そして三俣山荘が見えてきました。
このまま平行移動で三俣山荘まで直進できれば遠くない距離なのですが・・・。
現実はこの通り・・・。
黒部源流の沢まで下降して、そこから三俣山荘へ登り返します。
祖父岳を経由して鷲羽岳に登った方が楽だったかもw
そんなこんなで渡渉点まで下ってきました。
設置されたロープを握りながら大きな石の上をひょいひょいと進んで渡渉します。
黒部源流水源地標。
ここから三俣山荘に向けて登り返します。
三俣山荘に到着
黒部源流の渡渉点から登っていくと三俣山荘のテント場に出ます。
この日は夕方から明け方にかけて台風20号が通過する予報になっているため、まさかテント泊しようなんて考えている人はいないだろうと思っていましたが、テント場には数張のテントが・・・。
「ハイマツを風よけにできる場所だったら何とかなる?」
他にもいるのなら僕も・・・と風が防げそうな場所にバックパックを置いてテント泊の受付をしに三俣山荘に向かいますが・・・。
窓という窓に台風対策が施された三俣山荘。
ちなみに先々週に訪れた時の「通常営業時の三俣山荘」はこんな感じ。
山小屋でさえここまでやっているのだから、無策のテント泊が台風に耐えられるわけがないよな・・・と考えを改めて山小屋に宿泊することにしました。
1泊2食付で1万円です。
受付と支払いを済ませたあとにテント場に置いてきたバックパックを取りに行きました。槍ヶ岳方面の空はすでに雲に覆われつつありました。
部屋はこんな感じ。
平日で台風がやってくる日ということもあって布団は1人1枚で普通に眠ることができるとのことでした。
そうじゃなかったらテント泊という誤った選択をしていたかも・・・。
展望食堂で昼ごはん
荷物を部屋に置いて展望食堂に移動して昼ごはんを食べます。
三俣山荘自慢の展望食堂も台風のせいでご覧の通り・・・。
「展望ゼロ食堂」になってしまいました。
ラーメン&ビールで空腹を満たします。
食後はビールを追加購入して談話室で黒部の山賊を読みました。登山の経験を積んでから読み直すとまた新しい発見があって面白いですね。
他にも三俣山荘に関わる書籍や写真集などを見ながら午後のひと時をすごしました。
晩御飯はジビエシチュー
晩御飯は夕方5時から。
名物のジビエシチューを頂きます。(写真は先々週撮影したものを流用)
食事の時間が終わっても外の天気は空が雲に覆われ、ポツリポツリと少し雨が降っているくらいで「本当に台風来てるの?」と思ってしまう状況でした。
晩御飯の片付けが終わると展望食堂は夜喫茶として開放されます。
テーブルに置かれたアルコールランプとスクリーンに映写される写真のスライドショーが照明代わり。
ビールを買って一人静かにスライドショーを見ました。
19時過ぎ。
ビールを飲み終えたところで布団に入って眠ることにしました。
明日以降は台風一過の快晴とまではいかないものの、比較的落ち着いた空模様になるという予報です。
寝ている間に台風が過ぎ去って天気が安定してくれれば・・・。
そう思いながら目を閉じました。