はらですぎ

山とビールを愛するメタボリックおやじの登山ブログです。

北アルプスの八峰キレットをテント泊装備で歩いてきました

今年の夏休みは7月下旬を予定していましたが、直前になってコロナに感染してしまい、縦走登山の計画は9月下旬に延期しました。

そして9月下旬。

ようやくやってきた僕の夏休みに合わせるように台風が信じられない角度で急速旋回して本州にやってきました…。

台風は途中で温帯低気圧に変わりましたが、計画していた山域の天気予報は微妙なままだったので「登山はやめて普通にどこかに観光にでも行こうか…」と半ば諦めていました。

ところが直前になって予報が良い方向に転び始めたので、慌てて支度をして北アルプス縦走登山に向けて出発しました。

新幹線とバスで扇沢へ

早朝に横浜を出発し、上野東京ラインで大宮へ。そこから新幹線に乗り換えて長野駅で下車し、扇沢行のバスで今回の旅のスタート地点に向かいました。

連休明けの平日のはずがバスは満車で補助席を数席使うという盛況ぶり。

午前10時に扇沢に到着。

身支度を整えて柏原新道登山口に向かいます。

柏原新道登山口から冷池山荘へ

柏原新道では熊の目撃情報が多い印象があり、今年の7月には登山者が襲われて怪我をするというニュースもありました。

www3.nhk.or.jp

…というわけで念のために今回は熊スプレーを持参しました。

ある日、森の中、熊さんに出会わないことを願いながら歩きます。

前回の登山は立山、前々回は那須岳と、あっという間に森林限界を超えてしまうお気楽登山が続いていたので、この延々と続く樹林帯歩きがなかなか辛い…。

種池山荘

心を無にして黙々と登り、種池山荘に到着しました。

周囲は完全にガスの中。

ピザの提供は前日までだったようです。

仮に期間中だったとしても提供時間内に間に合いませんでしたが。

爺ヶ岳へ

種池山荘で補給をして出発。

種池山荘と本日の宿泊地である冷池山荘の間にある爺ヶ岳は、あまりの展望のなさに山頂標識すら撮っていなかったもよう…。

確か動画では撮っていたはず。

冷池山荘に到着

そんなわけで見どころが何もないまま冷池山荘に到着しました。

テント場の受付を済ませてテント場へ。

小屋とテント場が遠いとは聞いていましたが、思っていた以上に遠く感じました。また、平坦な場所が少なく設営場所を決めるのにしばらく悩みました。

結局平坦な場所はなく、比較的緩やかな傾斜のスペースを確保しテントを張りました(テントはarataのAX-79)。

テント設営後はやることがないので、ダウンロードしておいたNetflixの極悪女王を見始めたところ、面白すぎてあっという間に陽が暮れました。

晩御飯は持ってきたカップヌードル塩。

www.netflix.com

八峰キレットを行く

昨夜はテントの中に敷いたエアマットがテント場の微妙な傾斜によって足元に向かって徐々にズレていき、それが気になってまともに眠ることができませんでした。

いつもだったら1~2時間おきに目が覚めるものの、それなりに眠った感は得られるのですが、今回はあまり眠った気になれませんでした。

テント場で爆睡できる人が羨ましい…。

2日目は冷池山荘から鹿島槍ヶ岳と五竜岳に登って、唐松岳頂上山荘まで行くつもりでしたが「でした」の理由は後述…。

朝4時過ぎにはテント場を出発したかったのですが、テントの撤収とトイレなどで時間がかかってしまい、5時の出発となりました。

布引山の手前でつがいのライチョウに出会う

薄暗い登山道を黙々と歩き、もうそろそろ日の出か?というところでつがいのライチョウに遭遇しました。

オスは登山道を案内人のように先導し、メスは道など関係ないとばかりに自由気ままに歩いていました。

布引山

…というわけで布引山。

もうヘッドライトの明かりは必要なくらい明るくなりました。

もう間もなく日の出。

鹿島槍ヶ岳まであと少し。

遠く離れた場所から鹿島槍ヶ岳を見ると、二つの頂を持つ「ひとつの山」という印象を受けますが、近くまで来てみるとまったく別の山に見えますね。

日の出

2日目の朝がやってきました。

昨日はガスで何も見えませんでしたが、本日は快晴の予報。

北アルプス南部の山々もよく見えます。

進行方向左手には朝日に照らされた立山・剱。

風もそれほど強くなく、静かで気持ちの良い朝です。

僕を含めた2~3名くらいの登山者が距離を詰めたり離れたりを繰り返しながら、各々のペースで先へ進みます。

ため息の出る絶景。

あまりの美しさに何度も振り返ってしまう…。

鹿島槍ヶ岳の南峰

そんなこんなで鹿島槍ヶ岳の南峰に到着。

軽い補給と記念撮影などを行いました。

右に見えるのが鹿島槍ヶ岳の北峰です。

ここから先は険しい岩稜帯になるので、ヘルメットを装着して進みます。

後ろを振り返ると雲海がさらに広がり、北アルプス南部が雲の海に浮かぶ島のように見えました。

ここでタイムラプスを撮影しなかったことを後悔しています…。

鹿島槍ヶ岳の北峰

鹿島槍ヶ岳の南峰から少し下ったところにある分岐にバックパックをデポして、鹿島槍ヶ岳の北峰に登りました。

何故かミラーレス一眼での写真が1枚もなく、スマートフォンには酷く疲れた表情のオッサンが写った記念写真しか残っていなかったので写真は割愛…。

キレット小屋が見えてきました。

まだまだ下る必要がありそうです。

基本的に安全が確保できる場所でしか撮っていないので、この辺りの岩場の険しさをお伝えすることができないのですが、なかなかハードでした。

そういう時のためにヘルメットにマウントできるGoProを持ってきていたのですが、朝の気温の低さと風にやられて録画を開始して数秒で「寒いんで失礼します」と電源オフになる挙動が連続したので、撮影を諦めました。

寒い時用のバッテリーを入れていれば少しは動いてくれたんでしょうか…。

見ているのになかなか近づけないキレット小屋。

1歩踏み外したら奈落の底…みたいなところが結構あって緊張感が高まります。

散々下ってきて「そろそろ小屋に到着かな?」という所でハシゴと鎖場の連続。

小屋の直前まで気が抜けない危険個所が続きました。

キレット小屋で休憩

ヘロヘロになりながらキレット小屋に到着すると、ヘリコプターによる荷揚げ?が行われており、ヘリコプターのプロペラによる強風が小屋の前に吹き付けられていました。

小屋でトイレをお借りして、何か飲み物でも…と売店をのぞきますが飲みたい飲料がなかったのでパス。

出発時に購入した600mlの麦茶のボトル2本には、飲みかけの麦茶と空になったボトルに入れた水が半分くらい残っていました(計700mlくらい?)。

この先のコースタイムを考えればここで飲料を補給しておくべきでしたが、何とか間に合うだろうという判断を下してしまいました。

この判断が後の行程に大きく影響を及ぼします…。

キレット小屋をあとにして先に進みます。

次のチェックポイントは口ノ沢のコル。

キレット小屋の標高が2,518mなので、標高2,416mの口ノ沢のコルまで100m近く下って行くことになります。

しかもその区間の殆どが険しい岩稜帯です。

落ち着いた場所でしか写真や動画を撮る気力がなく、写真だけを見ているとお気軽ハイキングのよう思われるかもしれませんが、記事中の写真と写真の間には撮影できなかった険しい岩場が沢山ありました。

口ノ沢のコル

…というわけで口ノ沢のコルに到着しました。

ここで荷物を降ろして少し休憩しました。

左奥に見えるのが本日最後のピークになる五竜岳です。

まだまだ先は長い…。

北尾根の頭

その後はゆるゆると登り北尾根の頭へ。

口ノ沢のコルから150mほど標高を上げましたが、本日のラスボスの五竜岳はここから更に250m…。

五竜岳の山頂直下まで気を抜けない岩場が続きます。

今日来た道を振り返り、随分遠くから来たんだな…と実感。

ずっと見えているのになかなか近づくことのできない五竜岳。

途切れない緊張感と暑さで飲料の消費が想定以上に進んでしまい、残り少なくなってきました。

自分なりに気を付けながら歩いていたのですが…。

ハンガーノック?で動けなくなる

五竜岳の取りつき手前で体の動きが鈍くなってきているのを感じたので、バックパックを降ろしてしばらく休憩することにしました。

この日は唐松岳頂上山荘まで行くつもりでしたが、今の状況だとコースタイム通りに進むことが難しいと思ったので、五竜山荘に電話をしてテント場の空き状況を確認しました。

今からでも予約可能とのことだったので、計画を変更して五竜山荘にテント泊することに決めました。

これで残りの行動時間を短縮することはできました。

最後のひと登りをするために何か食べておきたいところですが、補給食はパサパサしたものばかりなので、食べようと思ったらもう少し飲み物が必要な状態です。

しかし手元に残っている飲料は100mlもないくらい…。

これは参ったな…というところで大きなバックパックを背負った登山者の方が追い付いてきたので、ダメ元で水を少し分けてもらえないか聞いてみたところ、快く分けて頂きました。

五竜でテント泊するとのことだったので「お礼に小屋でジュース奢ります!」と約束してお別れしました。

頂いた水を飲みつつ補給食を食べ、しばらく体を休めていたら動けるような気がしてきたので、息が切れない程度の速度で行動を再開しました。

五竜岳

…というわけで牛歩戦術で五竜岳の山頂までたどり着くことができました。

今日歩いてきた稜線を振り返ります。

反省点でいっぱいの八峰キレットでしたが、なんとか無事?にここまで来ることができました。

眼下に見える五竜山荘。

あそこまで歩けばテントを張って休むことができます。

山頂直下の岩場をクリアすればあとはイージーな登山道。

五竜山荘に到着すると、小屋の前に水を分けてくださった登山者の方がテント泊の受付を終えたところだったので、声をかけて売店のコーラを奢りました。

小屋の前のベンチに座ってコーラを飲みながらしばらく休憩(テーブルに突っ伏して動けなくなってしまいました)した後に、テント場の受付を済ませてテントを設営しました。

テント泊登山の時は、1時間おきに目が覚めてしまうくらい眠れない僕ですが、さすがにこれだけ疲労困憊ならバタンキューだろう…と設営したテントに入って横になりますが、小屋の自家発電のグォングォンという振動が伝わってきそうなくらいの大きな音が気になってまったく眠れませんでした。

仕方がないのでNetflixの極悪女王と映画版ゴールデンカムイなどを観ました。

日中の疲労で食欲はまったく無かったのですが、何も食べないのはマズいと思い、カップヌードルを無理やり流し込みました。

20時の消灯時間から1時間後の21時に自家発電が停止して静寂が訪れました。次に五竜山荘にテント泊する時は、小屋から離れた場所に設営したいと思います。

夜は30分おきくらいに目が覚め、寝ているのか起きているのかよく分からない状態を繰り返しているうちに起床時間を迎えました。

どれだけ疲れていても、自家発電が停止して静かになっても僕は山で熟睡することはできないようです。

五竜山荘の朝

3日目の朝は太陽を邪魔する雲が無く、雲海から顔を出す見事なご来光を見ることができました。

五竜山荘の目の前でこの景色が見れるのは最高ですね。

朝日に染まる五竜岳。

五竜山荘の周辺でしばらく写真を撮ったところで荷物を背負って出発します。

今日は唐松岳頂上山荘を経由して八方尾根から下山します。

五竜山荘から遠見尾根を下ればアルプス平まで3時間47分、唐松岳頂上山荘を経由して八方尾根から下ると5時間25分と1時間30分ほど余計に時間がかかりますが、遠見尾根の下りにあまり良い思い出がないので八方尾根から下山することに決めました。

唐松岳頂上山荘へ

序盤は緩やかな下りが続き、その後徐々にアップダウンが出てきます。

先行する登山者は目視できる範囲で数名程度。

天気の良い平日の静かな北アルプスは最高です。

五竜岳を振り返ると、じわじわとガスが沸き上がっていました。

連続する岩場ゾーン

最低鞍部を越えたあたりから岩々しい登りの危険個所が増えてきますが、どこも鎖が整備されており安全に歩くことができます。

昨日の八峰キレットと比べれば楽勝です。

しばらく続く岩場・鎖場を超えると唐松岳頂上山荘が見えてきました。

小屋が見えれば一安心。

唐松岳頂上山荘で休憩

唐松岳頂上山荘に到着したので荷物を降ろして休憩します。

自動販売機でミネラルウォーターのペットボトルを購入して、その中に麦茶の粉末を入れてシェイク。

初めて使用しましたが、この麦茶の粉末はかなり良いですね。

昨日の疲労の影響で今朝も食欲不振でしたが、まだまだ動き続けなければならないので、冷えた麦茶を飲みながら無印良品のバナナバウムを無理やり食べました。

目の前に見える唐松岳は小屋から往復で30分ほどで、サクッと登れる距離ではありますがすが、残った体力を下山に充てたいと考えパス…。

八方尾根から下山

休憩後に唐松岳頂上山荘を出発。

唐松岳頂上山荘の裏手に一旦登っていき、そこから八方尾根を下っていきます。

当初の計画に入っていた不帰の嶮と白馬三山はまた次の機会に…。

眼下には見事な雲海。

雲に浮かぶ五竜岳。

景色を楽しみながらどんどん標高を下げていきます。

八方池の手前あたりからガスで景色が見えなくなってきたので、歩行に集中しながら黙々と先に進みました。

八方池山荘に到着。

売店にソフトクリームがあったので迷わず購入。

あまりの美味さに2個目の購入を迷ったほど…。

その後はリフトとゴンドラを乗り継いで白馬八方に移動して今回の旅が終わりました。

思っていたよりも早く下山してしまい、八方バスターミナルに行くと長野駅行のバスがちょうどやってきたので、温泉・食事をすっ飛ばしてバスに乗車。

長野駅に向かいました。

バスの中で帰りの電車の時刻変更を行い、長野駅のベックスコーヒーで時間調整を行って横浜に帰りました。

まとめ

当初は1日目に冷池山荘、2日目に唐松岳頂上山荘、3日目に白馬岳頂上宿舎にそれぞれテント泊する3泊4日の縦走登山の計画でした。

コースタイム的には2日目に唐松岳頂上山荘まで行く、行けると思っていましたが、五竜岳の手前でハンガーノックになり計画を変更。五竜山荘にテント泊をして翌日下山となりました。

キレット小屋で「まぁ大丈夫かな」と飲料の補給をしなかったのが失敗でした。

今年は難しそうなので、来年は残ったセクションを何回かに分けて歩いて、最終的には日本海に下山する栂海新道まで踏破できたらいいな…と考えています。