数年前のシルバーウィークに涸沢にテントを張り、そこを拠点にして北穂高岳にピストンで登りました。その際に見た山頂からの景色、北穂高小屋のテラスからの展望に感動し、今度ここに来るときはテラスで絶景を眺めながらビールを飲み、ドラマチックな夕方や早朝の時間帯の絶景を堪能しようと心に決めました。
今回はその「今度」が遂に巡ってきた(天気予報を見てそう思った)ので上高地から北穂高岳を1泊2日のテント泊で登ってきました。
- さわやか信州号で上高地へ
- まずは涸沢へ
- 北穂高岳へ向けて出発!
- 南稜取付のクサリ場とハシゴ
- 南稜テラスのテント場
- 北穂高岳の山頂は・・・
- 北穂高岳のテント場について
- 北穂高小屋のテラスでガスが晴れるのを待つ
- 夕日とブロッケン現象とオコジョ
- 深夜の月明かり
- 北穂高岳山頂から見た朝の絶景
- 上高地バスターミナルへ下山
- 追記 2019.8.22 YouTubeに動画を公開しました
さわやか信州号で上高地へ
金曜日の夜に東京駅八重洲口を出発した「さわやか信州号」は、翌朝の5時30分頃に上高地バスターミナルに到着しました。
天気が良い土日の上高地ということで混雑を予想していましたが、到着してみるとそれほどでもなく拍子抜けでした。
身支度と登山届の提出を済ませ出発しました。
まずは涸沢へ
北穂高岳へのルートは幾つかありますが、涸沢を経由して山頂を目指すのが一般的です。時間と実力があれば別の選択肢もありますが、今回は1泊2日でのテント泊なので涸沢経由を選びました。
いつもの平坦な道をひたすら歩き、横尾でトイレ&コーラ休憩。
横尾から徐々に登山らしい道になってきて、本谷橋を越えたところでようやく本格的な登山になります。
涸沢に着きました。


涸沢小屋のテラスでソフトクリームとコーラで休憩。
ここまでの移動で結構疲れてしまい「もうここにテントを張って1泊でもいいんじゃね?」と、北穂高岳に登るかどうかを迷いだす僕・・・。
休憩しながらアレコレ考えましたが時刻はまだ10時半。
これからゆっくり登っても遅い到着にはならないし、ここまで来て涸沢泊では勿体ないと考え、予定通り北穂高岳へ向かうことにしました。
北穂高岳へ向けて出発!
涸沢から北穂高岳へのルートは、涸沢小屋の脇からひたすら登る一本道。
この日は朝から天気は良かったのですが、穂高の山々の上に覆いかぶさるように大きな雲が鎮座していて動きそうにありませんでした。
ただ、午後から夕方にかけて晴れるという天気予報だったので、山頂に向けて頑張って足を進めます。
「痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル」
村上春樹の名言を頭の中で反芻しながら登っていきます・・・。
それにしても暑い…。
時折涼しい風が通り抜けていきますが気休めにしかなりません。
南稜取付のクサリ場とハシゴ
南稜取付まで来たところでヘルメットを被ります。鎖場やハシゴを越えてどんどん高度を上げていきます。
ハシゴを登り切ったところで少し休憩・・・。
すっかり疲れてしまいましたが、今更引き返すわけにもいかないので、バックパックを背負い先へ進みます。
南稜テラスのテント場
12時半・・・ようやく南稜テラスのテント場に到着しました。
北穂高岳のテント場は番号が振られた場所指定制で、到着した段階でテント場には1張のみ。あとはバックパックをデポして受け付けに行っていると思われる状態の場所がひとつだけでした。
僕もこの荷物を持って小屋とテント場を往復するのは嫌だなと思い、目ぼしい場所にバックパックを置いて小屋に向かいました。
北穂高岳の山頂は・・・
テント場の受付をしている北穂高小屋は北穂高岳山頂を越えたところにあるため、まずは山頂に向かいます。(写真右上が山頂です・・・)
北穂高岳登頂!しかし何も見えない!!!
どんなに目を凝らしても何も見えないので、山頂直下にある北穂高小屋にテント場の受付に向かいました。
テント場の申込みとトイレを済ませ、来た道を戻ります。
北穂高岳のテント場について
北穂高岳のテント場から北穂高小屋まで片道15分くらいかかります。
トイレが北穂高小屋にしかないため、テント場でトイレに行きたくなった場合は15分ほどかけて小屋まで歩かなければなりません。
しかも小屋までは岩場の険しい道になっています。
山小屋とテント場が離れている場所は他にもありますが、山小屋に向かう途中で足を踏み外したら死ぬ・・・みたいな場所はなかなかないと思います。
そんなテント場なので頻繁に往復するのは嫌だなと思い、テントを設営して少し休憩したあとは、北穂高小屋まで移動して日が暮れるまでテラスに滞在することにしました。
テント場はひと張り1,000円でトイレ使用料込みです。
北穂高小屋のテラスでガスが晴れるのを待つ
理想:数年前に訪れた北穂高小屋のテラス
現実:ガスが次から次へとやってきて一向に晴れない北穂高小屋のテラス
生ビールを飲んだりカップラーメンを食べたり、テラスにいた小屋泊の方とお話をしながら天候の回復を待ちますが、いつまで経っても槍ヶ岳方面が見えてきません。(常念岳方面はギリギリ見えました)
しばらくすると、テラスの真下の岩場にライチョウのファミリーがやってきました。
もっと近づいて撮りたかったのですが、テラスの下は登山道ではないのでカメラの望遠を使って撮り、無理やりトリミングしてこのような写真になりました。
夕日とブロッケン現象とオコジョ
昼過ぎからテラスで天気の回復をひたすら待ちますが、ガスが晴れそうになると次のガスがやってきて・・・の繰り返しで槍ヶ岳方面の景色はいつまで経っても見えません。
日が暮れる時間帯になったところで、山頂の方が展望が良いかも・・・という話になり、テラスにいた方々と北穂高岳の山頂まで移動してみることにしました。
小屋から山頂に移動してみると、ガスの切れ間から照らされた太陽の光によってブロッケン現象が発生していました。
僅かなガスの切れ間から見える景色に一喜一憂しながら山頂での撮影会が始まりました。
そしてDJI OsmoPocketで動画を撮っていたら岩場にオコジョが現れました。
北穂高岳山頂で夕景を撮っている時に突如現れたオコジョ。OsmoPocketを向けたら辛うじて映っていた。
— はらですぎ (@hara_desugi) August 19, 2019
この被写体を写真で撮るのは無理だなと思った^^; pic.twitter.com/eOzwMBYZgz
あまりの素早さにその場では撮れていたか分かりませんでしたが、帰宅後にデータを確認してみたら辛うじて映っていました。
オコジョを見るのは初めてでしたが想像していたよりもだいぶ小柄でした。
太陽が雲の中に沈んでいったところで山頂での撮影会は終了。
トイレを済ませた後に皆さんに別れを告げ、徒歩15分のテント場に戻りました。
深夜の月明かり
19時過ぎに就寝。
テントの外ではライチョウの雄がゲロゲロ鳴いていました。
夜中にふと目を覚ますとテントの外が明るく感じました。
テントの外に顔を出してみると、月がテント場を明るく照らしていました。満月ではありませんでしたが、周囲を見渡せるほどの明るさでした。
写真撮影後シュラフに戻りますが、OMM MountainRaid 1.6単体では暖かさが足りず寒かったので、ダウンジャケットを重ね着してレインウェアのパンツを履いて寒さを凌ぎました。
北穂高岳山頂から見た朝の絶景
起床。
午前3時半過ぎにテント内を片付けながらカレーメシをさっと流し込み、4時を過ぎたところでテントを撤収しました。空いているテント場にバックパックをデポして、必要なものだけを持って山頂に向かいました。
小屋でトイレを済ませ北穂高岳の山頂に戻りご来光を待ちます。
そして日の出の時間。
常念岳の向こうから太陽が登ってきました。
北穂高岳山頂からは昨日見えなかったすべてが見えました。
北穂高岳で最高の朝を迎えるという念願が叶いました。
「小屋のテラスで絶景を眺めながらビール」は叶いませんでしたが、この素晴らしい朝を迎えられただけで十分です。
頑張って登ってきた甲斐がありました。
ゆっくり景色を堪能していたいところですが、月曜日から仕事なので家に帰らなければなりません。
山頂でしばらく撮影した後に、バックパックをデポしたテント場まで戻り、荷物を再度パッキングして下山します。
事前に予約してある松本駅からの電車の出発時刻から逆算すると、遅くとも14時前くらいには上高地バスターミナルに到着していなければなりません。
できればシャワーを浴びたいですし、もし道路が渋滞して松本駅からの電車に乗り遅れてしまうと大変なので、僅かに残っている体力をフル稼働させて下山します。
上高地バスターミナルへ下山
涸沢から北穂高岳へ登るのも大変でしたが、下るのもなかなか辛かったです。
必死の思いで下山して、上高地バスターミナルに到着したのが11時半。
松本駅までのチケットを手配し、インフォメーションセンターのシャワーで汗を流しました。
バスの出発時間まで少し余裕があったので、食堂で生姜焼き定食とビールを頂き、道中の栄養不足を解消しました。
その後、バスで新島々駅まで移動して電車に乗り換えて松本駅へ。予約しておいたスーパーあずさに乗って家路につきました。
序盤はガスで何も見えなくてどうなることかと思いましたが、いい感じに晴れてくれたおかげで素晴らしい朝を迎えることができました。
またひとつ良い思い出ができました。