いま八ヶ岳ではある高山植物の見ごろを迎えています。
その高山植物の名はツクモグサ。
北海道と北アルプスの白馬岳、そして八ヶ岳の横岳周辺にしか生息していない日本固有の高山植物で、5月の終わりから6月上旬に花を咲かせます。
先日ヤマレコでツクモグサが咲き始めているという情報を見て、これは見に行かねばということで休みに合わせて八ヶ岳登山の計画を立てました。
ツクモグサを見るための八ヶ岳周遊コース
ツクモグサが咲く横岳周辺へ行く方法は幾つかありますが、僕は山登りも楽しみたいと思い、美濃戸の南沢コースから行者小屋を経由して、文三郎尾根から赤岳に登り、ツクモグサが群生する横岳周辺にアプローチするルートを考えました。
ツクモグサを撮影した後は横岳山頂を経由して硫黄岳まで歩き、そこから赤岳鉱泉に下りてテント泊するかその日のうちに下山するかを決めることにしました。
したがって今回は少々軽量化したテント泊登山装備で歩きます。
自宅から赤岳山荘駐車場まで
土曜日の夜に車で自宅からスタート地点近くの赤岳山荘駐車場へ向かいます。前回訪れた時にも大変な思いをしましたが、美濃戸口から赤岳山荘までの道はとても道とは思えないデコボコの多いオフロードで、一般車両の場合は路面の状況を常に目視しながら細心の注意を払いながら運転する必要があります。
そんなデコボコ道を注意しながら進むと、やまのこ村の駐車場が見えてきます。以前ここに訪れた際はやまのこ村に車を停めましたが、今回は少しだけ先にある赤岳鉱泉の駐車場に駐車することにしました。
深夜0時少し前に到着しましたが、空きスペースは十分にありました。トイレを済ませて車内で朝まで眠ります。
到着時はさほど感じませんでしたが結構寒かったです。
南沢コースで行者小屋まで
朝4時くらいに目が覚め、コンビニで買ってきたオニギリを1個食べ、駐車場代の集金にきたおばちゃんに1日分の料金千円を支払い、身支度を整えて5時前くらいに出発しました。
南沢コースは日の出の時間を過ぎても高い山に阻まれているからなのか、陽の光がなかなか入ってきません。
鬱蒼とした樹林帯の中をひたすら歩きます。
足元にはホテイランが花を咲かせていました。
八ヶ岳周辺は苔の森と言われるだけあって、北沢コースも雰囲気のある苔むした樹林帯が続きます。少し歩くと登山道は沢伝いを歩くようになり、水の流れる音を聞きながらのんびりと足を進めていきます。
この辺りでようやく陽の光が入るようになってきました。
行者小屋に近づいてくると樹林帯のコースから白河原に出ます。
ここまで来るとあとは行者小屋の案内板のところまでひたすらここを歩いていくのですが、たまたま先行する登山者が脇道に入っていったので後をつけて僕もそちらに進んでみました。
ここがなかなか良い雰囲気で、立ち止まってはカメラを構えて撮影するため、なかなか先へ進めません。
撮影した写真のほとんどがボツカットでしたが、なかなか楽しい時間帯でした。この日の目的地が横岳ではなく行者小屋だったらもっとゆっくりできたのですが。
ふたたび白河原に出ると行者小屋の案内がすぐ現れました。そのまま足を進め、行者小屋へ向かいます。
行者小屋に到着しました。
赤岳鉱泉は通年営業していますが、行者小屋は営業期間が限られており、今年は6月に営業を開始するようです。小屋はまだ開いていませんが、テント場や水場やトイレは利用可能です。
ここで補給&トイレ休憩をとり、文三郎道から赤岳山頂を目指します。
文三郎道から赤岳山頂へ
行者小屋を出てすぐのところに残雪がありました。ただアイゼンが必要な量・場所ではないので足運びさえちゃんとしていれば問題なさそうです。
少し歩くと文三郎道の階段地獄が始まります。僕の中での階段地獄は丹沢の大倉尾根ですが、ここも距離は短いものの結構ハードな階段でした。
1段ごとの段差は文三郎道の方が大変かも。
だいぶ登ってきました。左下に行者小屋が見えます。
立ち止まって息を整えてを繰り返し、何とか登りきって赤岳と中岳の分岐点に到着しました。(手前の山が中岳、奥が阿弥陀岳です)
天気が良ければこの辺りから富士山が見えるはずですが、この日は空気が霞んでいて見えませんでした。南アルプスの山々はよく見えました。(手前は権現岳)
ザレた道を少し登るとゴツゴツとした岩が現れ、鎖を補助に使いながらよじ登っていきます。赤岳山頂へ向けてのラストスパートです。
見た目ほど難しい場所ではありませんが、狭い道なので混雑時は登り下りの順番待ちで渋滞するかもしれません。
赤岳山頂に到着しました。これまで2度ほど赤岳の山頂を踏みましたが、晴れた山頂は初めてです。一息ついたところで空腹であることを思い出しました。
所々で軽い行動食は食べていましたが、そろそろまとまった量の食事が摂りたいと思って赤岳頂上山荘に入りましたが、到着時間が早すぎたため食事はまだしばらく出ないとのことでした。
ここでバーナーを出して食事の準備をするのも面倒だなあと思い、行動食のブラックサンダーをポリポリ食べて先へ進むことにしました。
赤岳を下って赤岳展望荘を通過すると横岳山頂へ向けた登り返しが始まります。
赤岳周辺の山々は割と短い距離で繋がっているので、北アルプスのような穏やかな稜線歩きができる区間はほぼなく、下って登ってを繰り返すので結構疲れます。
それほど難しい場所ではないので難なく通過できることはできるのですが。
八ヶ岳のツクモグサ
しばらく行くと屈みこんで写真を撮っている人たちがいることに気が付き、そちらに目を向けると「ツクモグサ見ていってあげてください」と男性から声をかけられました。どうやらツクモグサの群生地に到着したようです。
ツクモグサは絶滅危惧種に指定されているようで、登山者が踏み入らないようにロープで囲われて保護されています。
僕のカメラのレンズはXF16-55mmF2.8 R LM WRで、最大で約84mm(35mm判換算)までしか撮れないので望遠域が少々足りません。
杭の真下に綺麗に咲いているツクモグサを発見しました。
この撮影をもって今回の旅の目的は達成です。
3年前に来た時よりもツクモグサの個体数が増えているような気がします。
仲良く集まって咲いている個体もあれば、
ぽつんと単体で咲いている個体もありました。
咲いていないツクモグサもパックンフラワーみたいでカワイイです。
ツクモグサは現在横岳周辺で元気に咲いています。興味のある方はぜひ見に来てください。(岩壁の危険な場所に群生している個体が多いので無理な体制で撮影しないように気を付けてください)
硫黄岳山荘でカレーライスを食べる
無事にツクモグサを撮影できた僕は、そのまま横岳山頂へ行き、その先にある硫黄岳へ向かいました。
赤岳頂上山荘でラーメンを食べそびれた僕は、その後も行動食のブラックサンダーをポリポリ食べていましたが、いい加減にちゃんとした食事を摂りたいと思い、硫黄岳山荘に入ってカレーライスを注文しました。
このカレーライスがかなり美味しかったです。空腹だったので評価が何割か増している可能性もありますが、スプーンの通りが良いサラリとしたカレーではなく、トロみのあるスパイシーなカレーでした。
一緒に購入したコーラと一緒に美味しく頂きました。
本当に美味しかったので、空いた皿を下げてもらう時に「このカレーすごく美味しかったんですけどオリジナルですか?」と聞いたところ「そうですよ。でも調理する人の気まぐれの味付けなので毎日同じカレーじゃないんです^^」と仰っていました。
カレーの話の後で恐縮ですが、硫黄岳山荘のトイレがまた素晴らしく、山小屋のトイレなのに洋式トイレで水洗でウォシュレット付なんです。トイレットペーパーは通常の山小屋のトイレと同様に脇に用意された段ボールに入れなくてはいけないのですが、それ以外は普通のトイレでした。
硫黄岳山荘で食事をしてしっかり休憩をとったことで体力もだいぶ回復しました。あとは硫黄岳山頂を経由して赤岳鉱泉へ下っていくだけです。
硫黄岳山頂から赤岳鉱泉へ向かう途中でカモシカに遭遇
硫黄岳山荘での食事ですっかり元気になった僕は硫黄岳山頂へ向けて出発します。ここから硫黄岳山頂はそれほど遠くはありません。ルートらしいルートがないガレた岩の道を歩いていきます。
硫黄だけはご覧のようになだらかな丘のような山なので、視界不良時に道迷いしないように大きなケルンが所々に設置されています。
しばらく登っていくと山頂付近に到着します。
ひとつ前の写真の緩やかな山容からは想像がつきませんが、硫黄岳の反対側はかつての噴火によってえぐれるように吹き飛んでしまっています。
ここが硫黄岳の爆裂火口です。
そして山頂。
なだらかな丘の上のような山頂です。悪天候時は自分の進むべき方向を見失ってしまいそうです。
硫黄岳山頂から見る阿弥陀岳、中岳、赤岳、横岳(左から)これから下山するのでこの山々のショットはこれで見納めです。
さあ下山だと歩き出したところ、硫黄岳へ登ってきた登山客がすれ違いざまに僕の右後方を指さして何か言ってきました。聞き取れなかったので「はい?」と聞き直すと「カモシカがいますよ」と教えてくれました。
振り返ってみるとカモシカがこちらをジッと見ていました。
しばらくの間こちらを見ていましたが、見飽きたのか岩の向こう側にひょいと行ってしまいました。 八ヶ岳周辺にカモシカが生息しているのは知っていましたが、実際に見るのは初めてでした。
赤岳鉱泉に到着、そして・・・
カモシカに見送られるように硫黄岳をあとにした僕は、赤岳鉱泉である決定を下す必要がありました。
それはテント泊で1泊していくか、そのまま下山するかという選択です。
先日このような記事を公開した通り、僕はせっかく山に来たのだから日帰りよりもテント泊するべきであると日頃から考えていまして、この日も当然そうなるだろうと思ってバックパックの中にはテントやシュラフを入れてきました。
そして赤岳鉱泉に到着して、受付のカウンター脇にある黒板に書かれた本日の夕飯をチェックしてみたところ「ステーキ」となっていました。
ステーキです。
「よし、これはテント泊確定だな」(テント泊でも事前にお願いしておくと山小屋の晩御飯を食べることができます)と思ってテント場の空きスペースをチェックしてみたところ、大学生らしき十数名のグループが外のテーブルなどで賑わっている光景が目に入りました。
その瞬間、同じような人数のグループがテント場で夜遅くまで騒いでいてなかなか眠れなかった3年前の嫌な思い出が僕の頭をよぎりました。彼らが当時の騒がしい集団と同じように夜遅くまで騒ぐとは限りませんが、何となく嫌だなと思った僕はテント泊をやめて下山することにしました。
赤岳鉱泉から車を停めてある赤岳山荘の駐車場までは約1時間30分。
淡々と足を進め15時30分くらいに赤岳山荘の駐車場に到着しました。
その後は昨日と同様に荒れ狂うオフロードを走って中央自動車道へ向かいます。中央道と言えば渋滞のメッカです。日曜日の夕方ですから当然その可能性は高く、渋滞抜きで帰れるわけはないと思っていましたが、途中で25kmの渋滞の表示を見て体から力が抜けていきました。
登山でだいぶ疲れていたので渋滞になる前に境川で、そして渋滞に入った途中の談合坂でそれぞれ軽い仮眠をとりながら家路につきました。
中央道が渋滞中…。
— はらですぎ (@hara_desugi) May 27, 2018
疲れたので談合坂で寝る!
中央道の渋滞を抜けたあと、圏央道から東名高速の海老名方面へ向かいますが、東名高速も横浜町田あたりで渋滞が発生していたので、厚木のサービスエリアで再び休憩。
結局家に着いたのは22時過ぎでした。
まとめ
今回はツクモグサを見るために、南八ヶ岳を赤岳から逆時計回りで周遊するコースを歩きました。可愛らしく咲いたツクモグサを見ることができましたし、硫黄岳山荘のカレーライスも最高でした。そして硫黄岳から赤岳鉱泉へ向かう途中でカモシカにも出会えて最高の日帰り登山になりました。
帰りの渋滞がなければパーフェクトだったんですけどね。
ツクモグサだけに標準を定めるのであれば、横岳登山口から横岳を目指すか、行者小屋から地蔵尾根を登って赤岳をスルーして横岳へ向かえば、行動時間に余裕を持たせた山登りができると思います。
ツクモグサは6月上旬まで咲いているようなので、興味のある方は横岳周辺を散策してみてください。