涸沢に行くたびに「いつかそのうち」とテント場から見上げていた奥穂高岳でしたが、ついに挑戦する日がやって来ました。
沢渡バスターミナルに隣接する「かすみ沢駐車場」に深夜0時をまわったあたりで到着すると、駐車場の込み具合がいつもとは少し違っていました。いつもなら余裕で停められるはずの駐車場が今回は結構込み合っていて、あやうく一段下のスペースまで移動しなければならないところでした。
案の定、翌朝の上高地行きの始発バスには大勢の登山者が押し寄せ、乗車券売り場とバスの乗車場所には行列ができていました。
4時40分の始発バスに乗り、5時過ぎくらいに上高地バスターミナルに到着しました。トイレ、準備運動、登山届などなど一通り必要な手順を手身近に済ませて出発します。
上高地から岳沢小屋へ向けて出発
今回は重太郎新道を通り前穂高岳、奥穂高岳と登るプランなので、涸沢や槍ヶ岳へ向かうルートとは異なり、河童橋を渡って岳沢小屋へ向かう登山道に入ります。
上高地を起点とする登山の場合、上高地バスターミナルから明神、徳沢、横尾と平坦なコースを数時間ひたすら歩く必要がありますが、岳沢小屋へ向かうルートは河童橋を渡って少し歩いたところですぐに登山道に突入します。
木の根があり石がありと、ごくごく一般的な登山道です。
しばらく歩くと見晴台という場所に到着します。
このルートは岳沢小屋までこのようなカウントダウン方式の標識が掲げられており、あとどのくらいで到着するかが何となくわかります。
岳沢小屋でトイレ休憩
2時間弱ほどで岳沢小屋に到着します。
ここから先は穂高岳山荘までトイレがないので、休憩で補給やトイレなどの諸々を済ませます。岳沢小屋には霞沢岳、焼岳、乗鞍岳などが望める展望の良いテラスがあります。
ここでしばし休憩しますが、まだ陽も登り始めたばかりで、結構寒かったです。
初日はここで宿泊して翌日に前穂高岳、奥穂高岳を目指すという方も多いようです。(雑誌などでもここで1泊を推奨しています)
重太郎新道へ
しばし休憩したのちに前穂高岳へ向けて本格的な登りが始まります。
岳沢小屋から前穂高岳へ続く「重太郎新道」は、穂高岳山荘の前身である「穂高小屋」を建設した今田重太郎さんが昭和26年に完成させた登山道です。
カモシカの立場
カモシカの立場という場所で休憩します。カモシカの立場とは!?
そうそう、今回はOMMのClassic32という軽量なバックパックにテント泊装備を詰め込んでみました。
軽量なバックパックであることと、割と体の上のほうで背負うタイプということもあって、今回のような全身を使う登山にピッタリでした。
ただ、夏山装備プラスアルファ程度の荷物しか入らないので、今回の時期はギリギリセーフといった感じでした。
カモシカの立場から先へ進むとハシゴやクサリ場など「歩いて登る系」から「手足を使ってよじ登る系」の場所が増えてきます。
この辺りから本格的な岩登りの場面が増えそうだと感じ、持ってきたヘルメットを被ります。
岳沢パノラマ
岳沢パノラマに到着しました。
このあたりまで来ると霞沢岳と焼岳が御覧の通りバッチリ見えます。
休憩していると長野県警察のヘリコプターが何かを探しているような感じで飛んでいました。
途中で何度かホバリングして下を確認するような動作をしていたので、もしかしたら何か情報を受けて捜索に来ていたのかもしれません。
周辺をしばらく飛んだのちに去っていきました。
さらに登る
岳沢パノラマで小休止してエネルギー補給したのちに出発。
雷鳥広場
すでに森林限界は超えており、ゴツゴツした岩をよじ登る場面がかなり増えてきました。雷鳥広場という場所に来たので雷鳥との出会いを期待しましたがライチョウとは出会えませんでした。
ホシガラスとは出会えました。
紀美子平へ
もう岩だらけ。
ペンキと先行者を頼りに先へ進みます。
そして紀美子平に到着します。
この場所は重太郎新道を開拓した今田重太郎さんの娘さんが由来なんだとか。
前穂高岳山頂へ
前穂高岳は紀美子平から登り30分、下り20分程度のコースタイムで、紀美子平にバックパックをデポして登頂するのが一般的のようです。
僕は紀美子平で少し休憩したのちにカメラとサコッシュと水を持って山頂に向かいました。
前穂高岳山頂へは、歩くと表現するよりも「手足を使ってよじ登る」と言ったほうがしっくりきます。
三点支持を意識しながら慎重に登ります。
奥穂高岳、涸沢岳、北穂高岳、槍ヶ岳が見えてきました。
落石に注意しながら最後のひと登り。
前穂高岳山頂に到着しました!
標高3,090m。
空は少し雲が出てきましたが槍ヶ岳まで見える見事な展望です。
山頂は結構広め。
少し先まで歩いてみると、さっき見えた穂高の山々と槍ヶ岳がよりはっきりと見渡すことができました。三脚を持ってこなかったことを激しく後悔しました。タイムラプス撮影するには絶好の場所だったのに・・・。
しばし山頂で景色を楽しんだあとは、来た道を慎重に戻り紀美子平でデポしてあったバックパックを回収して次の目的地へ向かいます。
奥穂高岳へ
前穂高岳から奥穂高岳は山肌を縫うように歩いていきます。
所々で険しい登りもあり、いよいよ体力的に厳しくなってきました。僕の体力の限界と時を同じくして奥穂高岳方面の雲行きも怪しくなってきました。
そしてそんな天気になると元気に活動しだすのが山のアイドル「ライチョウ」です。いそいそと岩陰へ向けて歩いていってしまい撮影できたのはこの写真のみ。
おそらくお母さんと成鳥になりかけの子供たちでしょうか。
いつになったら山頂に着くんだ・・・とゾンビのようにノソノソと歩きながら先へ進み・・・
ようやく南陵の頭に到着。
そしてすぐ先には奥穂高岳の山頂が。
周囲はガスガスで展望ゼロの状態でしたが、ここまで来れただけで満足です。
普段は山頂に着いても記念撮影はあまりしないのですが、今回はやり切った感が結構高かったので、順番待ちの列に並んで写真を撮ってもらいました。
記念撮影後に穂高岳山荘方面へ向かおうとしたところ、ジャンダルムがガスの切れ間から姿を現しました。恐竜の背中のような何とも恐ろしそうな場所です。
いつかは歩いてみたいけど命が惜しくてたぶん行けない高難易度のルート・・・。
僕がここを歩く日は来るのでしょうか?
穂高岳山荘へ
ここで待っていても天候が回復する見込みがなさそうだったので、本日の宿泊地である穂高岳山荘へ向かいます。
山頂から小屋まですぐだと思っていましたが、結構歩くんですね。
最後に山小屋前のハシゴを降りて到着です。
大混雑の穂高岳山荘
この日は山小屋もテント場も大盛況で、受付前には長蛇の列が・・・。そして受付には「小屋泊は布団1枚に2人で寝てもらいます」という内容の掲示物が張られていました。
これだから小屋泊は・・・やっぱり登山はテント泊ですよ。
なんて列に並びながら優越感に浸っていたのもつかの間。
受付を済ませてテント場に向かうと・・・。
・・・!?
平地には空きはすでになく、僕は仕方なくものすごく斜めになった場所にテントを張りました。
地面が斜めすぎてテントの前室で火器を使うことができそうになかったため、ポツリポツリと雨粒が落ちてくるなか、テントの外でお湯を沸かしてフリーズドライの白米と無印良品のカレーをいただくことに。
今回の火器はアルコールストーブです。
燃料は使い切りで、ガス缶のように中途半端に余らないところが気に入っていますが、お湯が沸くまでに結構な時間を要します。
カレーはとても美味しかったです。
斜めすぎて寝れない!
食後はかなり斜めな寝床を持ってきた荷物などで極力平地化することに努めました・・・が、気休め程度の改善にしかなりません。
もし睡眠中に激しい寝返りをうったら、転がって下の段(ヘリポート以外の設営場所は階段状になっています)に張ってあるテントまで落下してしまうのでは?と思えるほど斜めな場所でした。
ちなみに今回の寝具ですが、夏用シュラフ(寝袋)だけでは少し厳しいかなと思い、シュラフに被せて使うSOLエスケープヴィヴィを持ってきました。これは大正解で、これがなかったら結構寒かったと思います。
エアマットはシュラフの中に入れて使うKLYMITのINERTIA-O zoneです。僕はこの頭がずれない枕が結構気に入っています。
しかし夜はほとんど眠れませんでした。
寝返りをうったら下に落下してしまうかもしれないという恐怖、テントのフライシートを叩く雨音、収まる気配のない強風などなど・・・目をつむっているよりもスマホでネットしていた方が時間の経過が早いという経験は今回が初めてでした。
穂高岳山荘の朝
午前3時くらいになっても風の強さは変わりませんでしたが、この風のおかげでガスは徐々に晴れていきました。ただ日の出の方角は厚い雲で覆われており、ご来光は残念ながら見ることができませんでした。
下山開始
ご来光を諦めた僕は準備を整えて穂高岳山荘を出発します。2日目はザイテングラートを下り涸沢を経由して上高地に下山します。
ザイテングラートは滑落や落石事故などで死者が出たりもしている危険な場所ですが、それほど危ない印象は受けませんでした。恐らく前日に重太郎新道を歩いて険しい岩場に慣れていたからかもしれません。
しかし油断は禁物です。
周囲に迷惑をかけないように注意しながら涸沢を目指します。
少し下ってきたところでようやく太陽が顔を出しました。
これまで何度も見てきていますが、山で見る朝日というのは気持ちの良いものです。
背後には大きな月も見えました。
サクサクと下りパノラマ分岐を経て涸沢小屋方面へ向かいます。
途中ですれ違った老夫婦。
さすがに穂高岳山荘までは行かないとは思いますが・・・いいですねなんかこういうの。
涸沢小屋の手前では綿毛になったチングルマが群生していました。
そして涸沢のいたるところにあるナナカマド。
今年は真っ赤に染まってくれるといいんですが。
涸沢小屋のテラスで休憩し下山
穂高岳山荘から1時間30分ほどで涸沢小屋に到着しました。
自動販売機でコーラを買って、持ってきた無印良品のバナナバウムを食べてエネルギーを補給します。
しばし休憩した後に、涸沢を出発し上高地まで小休止を挟みながら下山しました。
さらば涸沢。また来ます。
最後に
これまで行こう行こうと思いつつ、なかなか実現しなかった奥穂高岳にやっと登ることができました。天気は少々残念ではありましたが、重太郎新道を歩いて前穂高岳とセットで登ることができたので、少しだけレベルアップした気がします。
重太郎新道は辛い部分もありましたが、とても楽しいコースなので、今度は2泊3日で北穂高岳まで足を伸ばし、涸沢でもう1泊するプランでじっくり楽しみたいと思います。
今週のお題「はてなブログ フォトコンテスト 2017夏」