今から4年ほど前の3月に蓼科山、4月に黒斑山、燕岳、5月に蝶ヶ岳にそれぞれ登り、残雪期登山から厳冬期登山にステップアップしていくかと思いきや、寒い時期の登山はここでストップ。
残雪期登山用に購入した道具を持て余したまま現在に至ります。
そんな夏から秋をメインに登山している僕ですが、せっかくのゴールデンウィークなので久しぶりに残雪期登山に挑戦してみることにしました。
4月27日土曜日の夜に東京駅の八重洲バスターミナルから出発する「さわやか信州号」に乗り込み、向かった先は上高地バスターミナル。
- 上高地は冬だった
- 長塀尾根を歩いて蝶ヶ岳へ
- 蝶ヶ岳山頂に到着!
- 蝶ヶ岳周辺で過ごす午後のひと時
- レアな気象現象「サンピラー」に遭遇
- 就寝。そして・・・
- 極寒!蝶ヶ岳ヒュッテのテント場の朝
- 撤収&下山
- ゴール!
- おまけ:今回撮影した動画をYouTubeにアップしました
上高地は冬だった
朝5時半くらいに上高地バスターミナルに到着。
バスを降りた瞬間に「寒い!」と叫びそうになりました。それもそのはず、土曜日に行われた開山祭は雪が降る中行われたようです。
河童橋からの焼岳。
そして進行方向の穂高方面。
この時期の上高地に足を運ぶのは初めて。
モノトーン調の山々がとても綺麗でした。
足元は凍結しています。
水たまりは凍り、踏み跡が付いた土の部分もガチガチに凍結しています。
スタート地点周辺でこの冷え込みですから蝶ヶ岳山頂は・・・。
徳沢の登山口を目指して歩く
今回の蝶ヶ岳登山は三股からではなく徳澤園の脇にある蝶ヶ岳・長壁山登山口から登ります。
涸沢に行く時は上高地→明神館→徳沢→横尾→涸沢となりますが、今回は徳沢から別の道を登って蝶ヶ岳山頂を目指します。
バスターミナルにいた人たちはどこへ?と思えてくる静けさ。
僕の前後には数人の登山者しかいなかったような気がします。
それにしても素晴らしい天気です。
このまま雲ひとつない快晴が続けばよいのですが。
雪の徳沢キャンプ場
徳沢のキャンプ場に到着しました。
前日は降雪したとは聞いていましたがこんなに積もっているとは・・・。
僕は割と暖かい春の北アルプスを歩くための道具しか持っていないため、もしここから先の登山道が深い雪に覆われているようであれば、徳沢でテント泊して帰るつもりでした。(ラッセル時に必要なワカンなどを持ってきていなかったため)
しかし蝶ヶ岳に向けて出発する方々を休憩しながらしばらく観察していると、そこそこの人数が出発しており、ツアーと思われる方々も登っていったので、行けるところまで行ってみようと思い出発することに決めました。
長塀尾根を歩いて蝶ヶ岳へ
というわけで徳沢登山口からアイゼンを装着して出発です。
地獄の樹林帯
徳沢から蝶ヶ岳への登山道は「長塀山(ながかべやま)」という標高2,582 mの山を経由します。
この登山道は「長塀山まで展望の無い延々と続く登り」が特徴で、序盤から結構な急登が続き、いつまで経っても森林限界が訪れません。ちなみに山と高原地図の徳沢から長塀山までの標準コースタイムは3時間40分です。
徳沢から約4時間弱、何の展望もない登りをひたすら登ります。
ここは夏にも歩いたことがありますが、いつ歩いても辛さは変わりませんね・・・。
山頂が近づいてくると地味なアップダウンが続き「そろそろ山頂かな?」といった雰囲気の場所が何度もあり、それが何度も裏切られます。
長塀山に到着
長塀山の山頂に到着。
ようやく景色が開けました。
富士山から南アルプスなどが一望できるなかなかの展望です。
長塀山まで来てしまえば蝶ヶ岳まであと少し!
そう言い聞かせて足を進めます。
見えました!
森林限界を超えた先に待っているのは穂高連峰や槍ヶ岳などの大展望です。
この絶景を見るために長く辛い長塀尾根を登ってきたのです。
蝶ヶ岳山頂に到着!
ようやく山頂に到着です。
まずはテント場の場所を確保してテント泊の受付を済ませます。
雪の無いスペースが早々に埋まってしまうことを懸念して、シャベルや1本62センチの「Easton Gold 24″」を4本持ってきましたが、ご覧の通りテント場は選び放題。
蝶ヶ岳周辺で過ごす午後のひと時
蝶ヶ岳ヒュッテで幕営料1,000円を支払いテントを設営し、再び小屋に戻ってきて食事を注文しました。
蝶ヶ岳周辺は結構風が強く、テントを設営している間に体が冷え切ってしまいましたが、脳がこれを求めていました。
そしてラーメン。
冷えた体に染み渡ります。
カメラを持って蝶ヶ岳ヒュッテ周辺を散歩
食後はテント場周辺をウロウロしながら辺りを撮影して歩きました。
天気予報通り午後は薄曇りのちょっと残念な天気。
ただ太陽の強い日差しは薄い雲の中からでも健在で、雪に覆われた北アルプスの山々を照らしていました。
左から前穂高岳、奥穂高岳、涸沢岳、北穂高岳。
写真中央右あたりの窪みが涸沢です。
あちらも大勢の登山客で賑わっていたのではないでしょうか。
蝶ヶ岳ヒュッテの向こう側には常念岳もよく見えます。
昨年の7月は三股から常念岳と蝶ヶ岳の周回コースを歩きました。
安曇野市の街並み。
こちらはよく晴れていますが、
穂高方面は曇ってきました。
テントでカレーメシを食べる
夕方17時を回り、空も曇って微妙な感じになってきたので早めの夕食を頂くことにします。今回はゴミを減らすためにカレーメシをジップロックに入れて持ってきました。
そして熱湯を入れても大丈夫なように専用のコジーも持参しました。


Ti570Cupの8オンスの目盛りがカレーメシに必要なお湯の量(230ml)になるので中身だけ持ってきてもちゃんと作ることが可能です。
沸騰したお湯を入れて待つこと5分。
ちゃんと完成し、美味しく食べることができました。
食後はジップロックを折り畳んでゴミ袋に入れるだけなので、フリーズドライ系の食事を何食か持っていく場合はゴミを削減することができそうです。
レアな気象現象「サンピラー」に遭遇
食後に外に出てみますが空は相変わらずの曇りで穂高方面に沈んでいく太陽を見ることはできませんでした。
「明日の朝に期待するしかないな・・・」とテントに戻って寝る準備を始めます。
この日は風も強くとても寒かったので、持ってきた衣類をすべて着込み、モンベルのスパイラルダウンハガー♯2にエスケープヴィヴィを被せました。
モゾモゾとシュラフに入って眠る準備をしているとテントの外から登山客のザワザワした声が聞こえてきたので、テントから上半身を出して外を見てみると、いつのまにか雲が取れてきて大キレット辺りが真っ赤に染まっていました。
日没の夕焼けとは違う火柱のような見たことのない現象でした。
後でツイッターのフォロワーの方に教えて頂いたのですが、これはサンピラーという気象現象の一種なのだとか。
こんなの見たことがないぞ!とカメラを持ってテントを飛び出してシャッターを切りました。そして雲に若干動きが出ていたので、ダッシュでテントに戻り三脚を持って眺めの良いポイントに移動し、サンピラーが消えていくまでの僅かな時間をタイムラプスに納めました。
就寝。そして・・・
サンピラーが消えていくのを見届けたところでテントに戻りシュラフに入りました。
夜が更けていくにつれ稜線上を吹き抜ける風が徐々に強くなり、トイレに行くのも迷ってしまうほどの爆風に見舞われます。
すごく煩かったので僕は持ってきたワイヤレスイヤホンを耳に装着して音楽をかけながら眠りました。
昼間からかなり寒かったので、夜は持ってきた装備で耐えられるかな?と少し心配でしたが、シュラフに入っている間は寒さを感じずに眠り続けることができました。
極寒!蝶ヶ岳ヒュッテのテント場の朝
朝になっても外の風は収まりません。
テントの中のペットボトルの水はシャーベット状になり、プラティパスの水もほぼ凍ってしまっていました。とりあえずプラティパスの水の部分を煮沸して、少し冷ましたところでペットボトルに飲み水として移します。
濡れたクッカーは前室に置いておいたら水滴がいつの間にか凍っていました。
外は相変わらずの強風ですが天気はご覧の通り。
これは確実にご来光がみれる天気!
装備を整えてトイレに行って、小屋の近くでご来光を待ちます。
日の出直前のオレンジ色の空と安曇野の街。
太陽が出てきました。
泊まりの登山の何が良いってコレですよね。
僕も三脚にカメラを固定して写真やタイムラプスを撮りたかったのですが、今回は軽量で小型のタイプを持ってきたので、この強風下ではあまり意味がないかなと思い、手持ちで撮影しました。
太陽が出てくると次に気になるのがモルゲンロート。
しかし穂高連峰は雲の中・・・^^;
常念岳方面はよく見えました。
写真では伝わりませんが、とにかく風が強くて周辺の雲はモクモクと凄い勢いで流れていました。
朝日に照らされるテント場はとても綺麗ですが、写真をよく見てもらうとテントが風で歪んでいるのが分かると思います。
そしてこの爆風のなかアンダー1万円の激安テント「トレックマン」が盛大に歪みながらも風に耐えていました。
これまで雲取山、烏帽子小屋のテント場で目撃してきたトレックマンをまさか北アルプスの稜線上で確認できるとは!
でも危険だから真似しない方がいいと思います。
撤収&下山
朝の撮影タイムを終えて、蝶ヶ岳ヒュッテの外トイレでUNKの順番待ち(2室しかないためタイミングが悪いと結構並びます)で長時間待たされてテントに戻ってくると雲が完全に消えていました。
当初の予定ではOKPさんの記事「蝶ヶ岳からの日の出を眺めて徳沢キャンプへ… 最後まで好天に恵まれたGW3日間でした - I AM A DOG」を真似して横尾に下りて徳沢にテントを張ってもう1泊、と考えていたのですが翌日以降の天気が微妙だったので、そのまま来た道を戻ることにしました。
最後に晴れた穂高連峰と槍ヶ岳を見ることができて良かったです。
想像以上の寒さと風でしたが手持ちの装備で何とかなりました。
再び長塀尾根を下って下って・・・。
徳沢まで戻ってきました。
前日の朝は芝生が見えないくらい積もっていた雪も殆どなくなっていました。
ここまで戻ってきた段階で結構疲れていたので、テントを張って眠りたい気分でしたが、天気予報を再度確認しても翌日が微妙だったので、芝生の上で荷物を再度綺麗にパッキングして上高地バスターミナルに向けて出発することにしました。
ゴール!
小梨平キャンプ場あたりからポツリポツリと雨が降り出しましたが、上高地バスターミナルに到着する頃には止んでいました。朝あれだけ晴れていたのに空はすでにどんより曇っていました。
今回は行きは「さわやか信州号」の夜行バスで、帰りはゴールデンウィークの渋滞を回避するために電車を利用して帰る計画。
上高地バスターミナルから新島々駅までバスで移動し、そこから電車に乗り換えて松本駅に行き、あずさに乗り換えて東京方面に帰ります。
バスのチケットを押さえたところで、インフォメーションセンターの有料シャワーで旅の汚れを落とし、何か食べようとレストランに入りますが数十名の順番待ちに唖然。
結局、山賊焼きと野沢菜のおやきにビールを買って(こちらも結構並びました)外のベンチで食べました。
その後、満車のバスに乗り新島々駅へ。
松本駅からあずさに乗って帰りました。
最寄り駅から少し歩く必要はありますが、行きも帰りも運転せずに渋滞にもハマらずに移動ができるので、なかなか快適でした。
とても楽しいゴールデンウィークの幕開けとなりましたが、帰宅後に山での事故が多数発生していたことを知り、胸が痛みました。
お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、今後より安全に山登りができるように今回の反省点を活かしていきたいと思います。