例年「ああ山に行っておけば良かった」と後悔する日が発生するため、今年は連休が取れたら天気予報が微妙でもできる限り現地に足を運ぶように心がけています。
…というわけで、夜の毎日新聞社前から毎日あるぺん号に乗って登山口の一ノ沢に向かいました。
天気予報は微妙でしたが。
一ノ沢登山口から常念岳へ
午前4時30分くらいに一ノ沢登山口(林道終点)に到着しました。
バスを降りると雨が降っていました。
パラパラ以上ザーザー未満くらいの雨量で、普段なら迷わず傘をさすレベル。
到着後しばらくは登山相談所の軒下で雨宿りをしていましたが、一向に雨があがる気配がないのでレインウェアを着て出発することにしました。
あたりはまだ暗く、ヘッドライトの灯りを頼りに進んでいきます。
陽が差し込まない暗い樹林帯の中を雨に打たれながら歩くのは初めてかもしれません。幸い僕よりも少し先に歩いている先行者がいたので怖さはありませんでしたが、もし僕一人だったらかなり心細かったと思います。
止まない雨
時間が経つにつれて明るくなってきますが、雨足は相変わらずです。
止みそうかな…と思ったら再び降り出すので、バックパックに入れたままのミラーレス一眼の出番がありません。(今回の記事はスマホで撮った写真とGoProの動画のスクショで構成されています)
地名に「沢」が入っている通り、序盤は沢沿いを延々と登り続けます。
夏の日差しを浴びながら登るのであれば気持ちが良いのかもしれませんが、空を見上げても青空は見えず雨が降り続けています。
常念小屋まであと一息
常念岳方面は薄暗い雲に覆われています。
写真中央に横に横断する登山道のようなラインが見えますが、ここは今シーズンから再開した前常念あたりから常念小屋までの巻道とのこと。
三股から常念に登る場合は山頂直下の分岐まで登る必要がありましたが、この巻道はそれをショートカットして小屋に直行することができるようです。
常念小屋で休憩
レインウェアの外側は雨で濡れ、内側は動き続ける僕から発せられる汗で濡れ…常念小屋まであと一息のところまで来ていますが、内外どちらも濡れ切ってしまいました。
一ノ沢ルートを登り切ったところで常念小屋が目の前に現れます。
雨はほぼ止んでいますが、小屋の外はなかなかの強風です。
とりあえず常念小屋で休憩しよう…と小屋に向かいますが、新型コロナウイルス対策で小屋の中で休憩ができません。
しかたなく小屋の外に臨時で設置されている簡易休憩所で寒さに震えながらCCレモンを飲みました。
稜線上は雨は止んでいるものの風は強く、この冷え切った状態で常念岳の山頂に行くのはちょっとなぁ…と尻込みしてしまいますが、ゆっくり歩いても蝶ヶ岳まで十分間に合う時間です。
天気予報によれば午後以降に天気が回復していくとのこと。
「よし行くぞ!」
心の中で気合を入れて常念小屋を出発することにしました。
常念岳の山頂へ!
常念小屋から常念岳山頂はコースタイム1時間20分ほど。
強風に吹かれながら山頂に向けて黙々と歩きます。
常念小屋で休憩している間に体が一気に冷え込んでしまい、吹き付ける風がとても冷たく感じました。
雨はほぼ止みましたが寒かったので防風のシェル代わりにしばらく着続けることにしました。
常念岳に登頂!
常念岳の山頂に到着しました。
天気が良ければ山頂から槍ヶ岳や穂高連峰がこれでもかというくらい良く見えるのですが、今回は残念ながら何も見えませんでした。
天気が良い日の常念岳は以前に登った以下の記事・動画をご覧ください。
相変わらず風が強く、景色もイマイチなので山頂に長居する理由はありません。
蝶ヶ岳へ
このまま蝶ヶ岳に向かうことにします。
まずは常念岳の山頂から最低鞍部まで下っていきます。
天気が悪いと出てくる鳥
途中でライチョウに出会いました。
ようやく今期1羽目…。
下りに下ったあとはピーク2592に登り返します。
ピーク2592
この辺りまでは大して辛くもないのですが…
ここから再び下って蝶槍への登り返しで疲れてきました。
天気が良ければ気分もまた違ったのかもしれませんが。
コースタイム通りには歩けていますし、天気も微妙なので急いでも意味が無いのでマイペースで登っていきます。
蝶槍に到着しますが・・・
蝶槍に到着しました。
昔はここが蝶ヶ岳の山頂だったようですね。
蝶ヶ岳ヒュッテまであと一息です。
天気が良ければここから蝶ヶ岳ヒュッテまでは、槍ヶ岳や穂高連峰を眺めながら最高の稜線歩きができるわけですが…
ご覧の通り見たいところが雲で覆われて何も見えません。
しかも穂高側から、体重78キロの僕が時折よろけるレベルの風が吹きつけています。写真では伝わりませんが、とにかくすごい風でした。
夕方にかけて風が収まっていく予報にはなっていましたが、もし予報通りにならなかった場合は蝶ヶ岳ヒュッテにテント泊をするのは危険な気がします。
常念岳から下っている途中ですれ違った方に「昨晩も風が凄くてテントが2張くらい吹っ飛ばされたらしいです」みたいなことを聞いていたので、余計に心配になりました。
しかも今回僕が持ってきたのはいつものダブルウォール型の風に強いテントではなく、トレッキングポールを2本使って設営する非自立型のシングルウォールシェルターです。
横尾への分岐に来たところで立ち止まってしばらく考えました。
リスクを承知で蝶ヶ岳ヒュッテに行くのであればあと数十分歩くだけ。でもここから横尾まで下ると追加で2時間の所要時間が…。
熟考した結果、横尾に下ることにしました。
強風のため横尾に下山
ゴール寸前で所要時間が2時間追加になってしまいましたが仕方がありません。
樹林帯に入ると稜線での暴風がうそのように静かです。
そして2時間弱くらいで横尾に到着しました。
この段階で空にはずっと見えなかった青空が雲の切れ間から見えました。
Twitterで検索してみたところ、蝶ヶ岳周辺の天気は多少改善したようです。もしかしたら横尾に下りずに蝶ヶ岳ヒュッテに行ったほうが正解だったかもしれませんが、今回の判断には後悔はありません。
横尾山荘でテント場の受付を済ませて持ってきたラーメンを食べながら、自動販売機で買ったビールを飲みました。
そして天気も天気なのでシェルターの中で横になってゴロゴロしているうちに眠くなってきたので、そのまま眠ることにしました。
上高地バスターミナルへ
翌朝。
朝食に持ってきたカロリーメイトを食べて、トイレを済ませて撤収します。
蝶ヶ岳ヒュッテに張るのは危険だと判断した軽量シェルターがこちら。
ZEROGRAMのZERO1 MFというシェルターです。
4隅をペグダウンしてトレッキングポールを立てて設営する非自立型です。高さがないので、風向きに注意して張れば稜線上でも大丈夫なのかもしれませんが、今回はやめておきました。
横尾を出発して6時に徳沢に到着。
ソフトクリームは営業時間外のため食べられず…。
ツキノワグマに警戒しながら明神~小梨平間を歩く
僕が入山した9日の深夜くらいに、小梨平キャンプ場にツキノワグマが出たようです。
ソロキャンプ中の女性のテントが熊に襲われ、テントの中にいた女性は足を怪我したそうです。
北アルプスの玄関口、上高地(長野県松本市)の小梨平キャンプ場で9日午前0時ごろ、テントに泊まっていた東京都内の50代女性がクマに襲われ、右足に10針縫うけがをした。数日前からクマの目撃情報が相次いでおり、捕獲されるまでキャンプ場は閉鎖となった。
横尾に滞在している間にネットで情報を知っていた僕は、明神から小梨平キャンプ場までの区間を警戒して歩きました。
幸い上高地側から歩いて来る登山者が結構いたので、独りで心細くなることはなかったですし、ツキノワグマに出会うことはありませんでした。
小梨平キャンプ場は閉鎖されていて誰もいませんでした。
こんなに静かな小梨平キャンプ場を見るのは初めてです。
小梨平キャンプ場といえば上高地バスターミナルから歩いてすぐの場所にあるキャンプ場で、ここから先の明神館までは登山者以外の観光客も大勢訪れる場所です。
こんな人通りの多い場所にツキノワグマが出るなんて思いもよりませんでした。
後日のニュースでテントを襲ったとみられるツキノワグマが死んでいるのが見つかったようです。
河童橋
そんなわけで、これまでにないくらい静かな小梨平キャンプ場を通って河童橋まで来ました。まだ時間も早いからか河童橋には観光客が殆どいませんでした。
そして橋から見えるはずの焼岳や穂高連峰は雲の中。
上高地食堂で朝定食
上高地バスターミナルにある上高地食堂の朝定食の時間に間に合ったので和定食を注文しました。
疲れた体に染みわたる美味しい定食でした。
そして最近気に入っているリンゴのソフトアイス。
リンゴの果肉が入っていてとても美味しい。
おわりに
そんなわけで雨に打たれながら一ノ沢を登り、常念岳になんとか登頂するも、蝶槍からの爆風に心が折れて横尾に下山するという残念な縦走登山となりました。
まあ安全第一ですから無理は禁物なんですが、今シーズンの夏山はなかなか当りを引けないですね。
事前に予約していた上高地バスターミナルからのバスに乗り、新島々で乗り換えて松本駅に移動。そして、えきネットで予約しておいた「あずさ」に乗って新宿経由で自宅の横浜に帰りました。
昨年から始めた往路は夜行バス、帰りは電車のスタイルがすっかり板につきました。少々お金はかかりますが非常に快適です。